中華圏マーケットを対象にした多言語サイト制作に取り組む前に、押さえておくべき「似て非なる中国・台湾・香港マーケット」についてを解説していきます。
本題に進む前に、まずは弊社のメイン拠点である香港の特徴的な多言語事情をご紹介します。
香港の多言語事情
香港は、面積1,106 km²、人口約750万人で、人口も面積も東京都の約半分となっています。そんな香港の人口比率とおよそ使われている言葉がこちらです。
まず72%を占める地元香港人、広東語を話す人。
そして中国本土からの移民と言われる人口が20%、こちらは一般的な中国語である北京語、マンダリンを使う人たち。
そして、それ以外の外国人の人口が8%となっており、英語をはじめとする他言語使うだろうという人たちです。
ちなみに、東京都に住む外国人の比率は、3.98%となっており、この数字と比較すると、香港の人口に占める現地語以外を使う方の比率の大きさを感じていただけるかと思います。
このため、香港の政府サイトも、多言語で展開されています。
香港政府のサイトを見てみると、「繁体字中文」「簡体字中文」そして「英語」には、必ず対応しています。すべてのコンテンツではないのですが、この3言語以外でも合計10ヶ国語で、重要な情報を提供しています。
このように、香港は多言語対応があたりまえの都市となっています。
中国・香港・台湾の「言葉」の違いはどの程度?
さて、それでは中華圏マーケットには中国語サイト1つあれば十分なのでしょうか?
まずは言葉の違いから、ということで、こちらの表にまとめています。
中国・台湾・香港で使われている中国語、それぞれ異なっています。
まず中国で話されている「普通話(ふつうわ)」、そして台湾で話される「国語(こくご)」、この2つは「北京官話(ぺきんかんわ)、マンダリン」と呼ばれる、日本の私たちが一般的に「中国語」として認識している「ニーハオ」とか「シェシェ」といった言葉です。
一方で香港は「広東語(かんとんご)」が話されており、マンダリンとはかなり発音の差がある読み方をします。
「問題ないよ!」というときに使う、「モウマンタイ!」という言葉、聞いたことある方も多いのではないでしょうか。これが、まさに広東語です。ほかにも、ジャッキー・チェンがスパルタンXやプロジェクトA、ポリスストーリーといった映画で話している言葉、というと分かりやすいかもしれないですね。
そして書き方の面では、中国「普通話」が、画数の極端に少ない「簡体字」 を使うのに対し、台湾国語と、香港の広東語は、画数の多い「繁体字」が使われています。
このため、ウェブサイトの表記では、中国本土マーケットの場合は簡体字にして、台湾・香港マーケットの場合は繁体字にしましょう、という選択肢になるかと思います。
また、文章でどれくらいの違いがあるのか、ちょっとした例文でご紹介したいと思います。
「彼はタクシーに乗るのが好きです」という日本語を訳してみました。
まずパッと見のところ、書かれている文字で見ていきますと、まず中国の表記では、画数が少ない簡体字の表記です。そして台湾の国語は、画数が多い、繁体字の表記です。
違いがわかりやすいのが「车」と「車」の文字。どちらも車という文字なのですが、簡体字の方は「牛」という字を書き間違えたような、なんとも物足りない感じがしますね。
そして香港広東語ですが、台湾と同じ繁体字の表記ではあるのですが、こちらはより口語的な言い回しをする場合があり、こちらの例文ではマンダリンとは丸っと違う単語使っています。
以上はあくまで一例ですが、現地の方にとって違和感のない、わかってもらいやすい表現をしようと思うと、この3エリアでこれだけの違いが出てくる、ということを感じていただければと思います。
それぞれの言葉を見た時・聞いた時の印象は?
それでは、それぞれのエリアの人が、自分の使っていない中国語表現を見たり聞いたりした場合の印象ってどんなものでしょうか。
中国本土の方が、自分が使っていない中国語表現に触れた時
まず中国本土の方が、繁体字を見たり、広東語を聞いた場合どうなるか。
繁体字を見た場合、「頑張ったら読めそうだけど、すごいストレスがかかり、理解できない字もある。読みたくない。」
そして、広東語を聞いた場合「広東語なんだろうなとは思うけれど、全然何いってるかわからない。。」となるそうです
総じて、やはり中国本土の方へは簡体字中国語で記載し、音声はマンダリンを用意する必要があります。
台湾の方が、自分が使っていない中国語表現に触れた時
続いて、台湾人のもつ印象です。
簡体字を見た場合「まあ読めるけど、時々わからない。どうしても簡体字のコンテンツしかなかったら、少し我慢して読もうと思う。もし、繁体字のコンテンツが用意されていたら、「ああ行き届いていて嬉しいな」と感じる。」ということでした。
広東語を聞いた場合は、中国本土のかた同様に、「広東語なんだろうなとは思うけれど、かわからないな。。」となるそうです。
ということで、台湾の方へは繁体字中国語のコンテンツがベストで、音声は中国本土と同じマンダリンを用意すればOKです。
香港の方が、自分が使っていない中国語表現に触れた時
最後に、香港人のもつ印象です。
もし簡体字中国語のコンテンツがあった場合、「まったく見ようと思わない」という回答もありました。
そしてまた特徴的なのは、英語が読める香港人が多いというところです。
このためもし香港人が日本語のサイトを見にきて、日本語の他に簡体字の中国語と、英語のページしかなかった場合、迷わず英語のページを見に行くと答えた人がいました。
では、香港の方がマンダリンを耳にした場合はどうでしょうか。
香港自体が、中国本土からやってくる移民や観光客が多いこと、また、中国本土とのビジネスが多い、ということもあって、マンダリンを話せる聞ける香港人の割合も増えてきています。
では、香港の方が台湾国語の繁体字コンテンツを見るとどうでしょうか。
先ほどの「彼はタクシーに乗るのが好き」という翻訳例では、台湾国語と広東語はだいぶ違うとご紹介したのですが、実のところあの文例の広東語は、話し言葉であり、書き言葉としては香港でも台湾国語と同じ表記をつかいます。
香港人は新聞や教科書などの書籍では「書き言葉」として繁体字でマンダリンを理解することができますので、ウェブサイトにおける記載は、台湾國語の繁体字の文章があれば、香港人にも十分に通じる、ということになります。
ということで、香港の方向けには繁体字コンテンツか、どうしても予算が取れなければ、英語コンテンツを用意するのもOKと言えそうです。
ですが、ピンポイントに香港人を対象として、親しみやすく刺さるプロモーションをねらう時はきちんと繁体字や広東語表現の対応をしたいところですね!
SNSやメッセージツールの違いを知っておこう
中国・香港・台湾では、インターネットユーザーが利用しているウェブサービスも大きく異なってきます。
グレートファイアーウォールに関するよくある勘違い
グレートファイアウォールとは、一言でいうと、中国の国策として行われている大規模な検閲システムのことです。
よく中国出張に行くと、「Googleが使えない」「Facebookが使えない」と耳にすることがあるかとおもいますが、これらもグレートファイアーウォールによる規制があるためです。
じつは、このグレート・ファイアウォールって、「香港そして台湾は範囲外」となっています。
なのですが、意外と知らなかった、という方が多いのですね。
ときどき、「香港ってGoogleとか使えないんですよね?大変ですよね?」と質問されるのですが、GoogleもFacebookも問題なく快適に使えており、日本のみなさんと同じ環境です!
そして、このグレートファイアウォールの内側なのか、外側なのか、というところで、インターネットユーザーが利用しているウェブサービスも大きく異なってきます。
ソーシャルメディアの利用率比較(中国・香港・台湾・タイ・日本)
こちらは、インターネットユーザーを対象にした調査ベースでの、利用パーセンテージです。
香港・台湾では、Facebook、Youtube、WhatsApp、LINEといった日本でも馴染みのあるものが上位を占めているのに対し、
中国本土では、ウィーチャットやウェイボー、バイドゥといった全く違うサービスが並びます。
台湾でのLINEの利用率86%というのもなかなか興味深いですね。
サイトに掲載するシェアボタンや、問い合わせ用のチャットツールの選択肢として、狙いたいエリアによって、メジャーなものから押さえておくと良いでしょう。
まとめ
中国本土、香港、台湾、それぞれの違い、いかがでしたでしょうか?
中国語サイトを扱うなら、まずはここが基本となりますので、ぜひしっかりと把握しておきましょう。
とくに、香港・台湾向けのウェブサイトでは、グレートファイアーウォールの影響を受けない、Googleサービスが使えるエリアですので、いつもどおりのサイト開発やSEOが展開できる、というのは気が楽ですよね。