今回は、ウェブサイトの多言語化における5つのポイントのお話です。

そもそも、多言語化って、日本語のコンテンツをそのまま翻訳すればOKでしょうか?

  • デザイン
  • 類似商品・サービスの有無
  • 嗜好・文化・風習
  • よく使われるSNS

などといった、日本独自のモノ・文化慣習などに、そのまま翻訳を当てるだけでは通じないことがあります。

そこで、ローカライゼーションという考え方が大切になってきます。

ローカライゼーションとは、日本語にすると「地域化・現地化」という意味です。

英語の Localisation の最初のLと最後Nの字をとって、間に10文字あることから、「L10N」と表記されることもあります。

言語が異なるというだけではなく、文化も異なる人でも、理解してもらえるようにするには、この、ローカライゼーション という考えが必要になってきます。

具体的なステップはこのあと触れていきたいと思いますが、このローカライゼーションとセットで出てくる言葉として、インターナショナリゼーションという概念もあります。

日本語にすると「国際化」という意味になります。こちらも、先ほどと同じように略されて、i18n、と表記されることがあります。

先ほどのローカライゼーションに先立ってやっておく事前準備のことで、さまざまな言語や地域に対応できる形に作っておくことをインターナショナリゼーションと呼びます。

では、この二つの概念を、多言語サイトの制作フローに当てはめると、次のようになります。

まずは国際化(インターナショナリゼーション)をへて、地域化(ローカライゼーション)へと進めていきます。

そうすると、このフローの中で、「翻訳」というのはあくまでローカライゼーションの一部という位置付けになります。

言語が異なり、文化も異なる人に、わかりやすく伝えるには、翻訳だけにとどまらず、しっかりと、ローカライゼーションに対応することが肝要になってきます。

ローカライゼーションとは、ただ翻訳するよりも複雑なプロセスです。
手間がかかってしまって、めんどくさいと感じてしまうかもしれませんが、「多言語サイト成功の肝はローカライゼーションにあり!」という前提を押さえていただき、5つのポイントに触れていきたいと思います。

ウェブサイトのL10N(ローカライゼーション)5つのポイント

では、ウェブサイト多言化のキモとなる、ローカライゼーションに取り組むための5つのポイントとして、

  1. コンテンツ
  2. 翻訳
  3. デザイン
  4. サーバー
  5. SEO

以上の切り口から、ひとつひとつを見ていきましょう。

1. コンテンツ

まずは、コンテンツのこと。

コンテンツの種類として、企業情報・製品スペックといった「どの地域でも変わらない普遍的な情報」と、商品のプロモーション・ページなどといった「現地向けに調整した方が良い情報」に分けることができます。

普遍的な情報は、そのまま翻訳へすすめても問題ないですが、重要なのは、現地向け情報です。

日本語サイトで用意したコンテンツを、そのまま翻訳したものだと、現地では刺さらないケースもしばしばです。

ちょっとした例を挙げますと、季節的なコンテンツで、「お正月」「お雛祭り」や「七夕」と言った日本独自の文化的イベントは、私たちには当たり前のことであっても、多言語展開の時にはさらに詳しく、行事の意味や、特別な食べ物があるのか、家族との過ごし方など、文化的な背景を解説する必要が出てくると思います。

このように、時には対象地域に合わせたオリジナルコンテンツを作成してから、翻訳に進めるケースも発生します。

2. 翻訳

続いて翻訳について。

翻訳方法にはどんなものがあるのかを、一覧表にまとめてみました。

上から、予算の低い順に、機械翻訳、クラウド翻訳、翻訳会社、そして「できる!制作会社」とならんでいます。

機械翻訳は無料で瞬時にできる一方で、時々まだある大誤訳。結局人力でクオリティチェックをして仕上げる労力がまだまだ大きいのが現状です。予算の少ない案件や、大量のページ数で随時内容がアップデートされるようなドキュメントページに採用されるケースがあります。

つぎにクラウド翻訳サービスですが、こちらは近年増えている、翻訳依頼者と翻訳者とのマッチングサービスです。弊社も利用したことがあるのですが、分量少なめですと、早いと数時間後には人力で翻訳されたものが納品されます。安くて早くて気軽に使える人力翻訳ですが、一方で複数の翻訳者によるまちまちのトーンや表現になることから、こちらもある程度、最後にクオリティチェックを行い、トーンの統一を行う手間がかかります。

そして翻訳会社ですが、一定の時間とコストをかけられるのであれば、品質を担保して仕上げられる確実な選択肢になるかと思います。

そして最後の「できる!制作会社」ですが、これは、翻訳からコンテンツ、マーケティングまで踏まえた制作が「できる!」Web制作会社のことを指しています。この、できる制作会社に依頼すれば、依頼者は一気通貫でらくちん、制作側もプロジェクト単価のアップを見込めるのでお互いウィンウィンな選択肢となりますね。

ということで、翻訳方法により、各々、一長一短があります。

予算や、対象言語、マーケットの重要性などから判断して、選択していくことになります。

3. デザイン

ローカライゼーションを考える上で、デザインも重要な要因です。

UIとUX含むデザインのローカライゼーションのチェックポイントを、カラー、フォント、画像、お問い合わせツール、ユーザー登録方法についてにて、まとめた表がこちらです。

特筆したいこととしては、カラーについて。色のもつ意味あい、気をつけたいところです。

一例では、例えば黒の扱い。日本ではクールでシックな黒でも、中華圏ではとにかく縁起が悪いと受け取られがちです。日本のお正月向けの黒のお重アイテムを中国向けに紅色にしたところとても受けが良かったというお話も。また、日本では避けられがちな紫色が中華圏では風水で良い色とされ、好まれたりもします。

また、お問い合わせツールでは、コンタクトフォームだけでなく、チャットツールやメッセージアプリの導入も検討の必要があると思います。

そして、ユーザー登録についてですが、とある中華圏の案件で、ユーザー登録の際にメールアドレスを使用してもらうという一般的な仕様にしていたところ、中国のユーザーでそもそもメールアドレスを持っていないので登録できないということがありました。このときは、WeChatでもログインできる仕様に変更、ということで対応しました。(中華圏で利用されているSNS・チャットツールの情報はこちらの記事でどうぞ。

ということで、ユーザー登録方法もローカライゼーションの一環として、考慮しておくべきポイントとなります。

4. サーバー

つづいて、サーバーについてです。

ずばり、サーバー選定のポイントは、「遠い国からのアクセス、スピードは十分速いのか」という点です。

ウェブサイト多言化の序盤では、ひとまず日本にあるウェブサーバーに、追加で他言語のウェブサイトも設置してスタートしましょう、というケースも多いかと思います。

もし対象地域が遠い場合、成果に影響するほどサイトの表示に時間がかかるという問題が出てくる場合もあります。

おいおいウェブサイトへのアクセスが増えてきて、市場が有望ということになれば、

  • 対象国・地域に、サーバーをおいて運用すること
  • 日本にあるウェブサーバーで運用しつつ、対象国・地域のCDNから配信する

といった改善策が選択肢としてあげられます。

5. 多言語SEO

そして最後に多言語SEOについてです。次回の記事で詳しく解説をしていきます。